バレンタインのお返しの日をホワイトデーという
3月14日。
それは、2月14日の対義語。
バレンタインのお返しをする日なのだ。
犯罪組織の幹部、ジンとウォッカは本屋にいた。
「……」
「兄貴……ι?」
兄貴の手には一冊の本。
¨サルでも作れるお菓子¨
「兄貴まさか、バレンタインのお返し…手作りですかい?」
兄貴がエプロンをしてキッチンに立つ姿を想像してしまった。
ふふ、ふははは!!!
や、やべぇ!笑ったらダメだ!
兄貴が物凄い目付きで睨んでいる。
お得意の超能力で俺の考えてる事を読んだのだろう。
だがすぐに本に目を戻して
「手作りには手作りで返さねぇとダメだろ。」
とボソリと呟いた。
意外と律儀だな…
「何がいいと思う?」
「そうっすね…。クッキーなんかどうですかい?」
パラパラと本のページをめくり、クッキーのページを開いた。
「クッキー…………。」
カタ…コト………ガシャン!!!
兄貴…すげぇ頑張ってる……ι
さっきから兄貴は、キッチンに立って目的のクッキーを作っている。
エプロンをつけて……
兄貴、頑張れ!!!
俺は『巨●の星』に出てくるお母さんみたいに影で見守った。(←わからない人すみません)
兄貴の奮闘は3時間ほどにもおよんだ。
チン!
激戦終了のチャイムが鳴った。
レンジの扉を開けると、美味しそうでもないが不味そうでもない匂いが漂った。
ほんの少し焦げたかな?くらいの色をしたクッキーが顔を出した。
「やりましたね!兄貴。」
「あぁ……。」
机の上に置かれた今までの失敗作を見ると、兄貴の頑張りがうかがわれる。
「ウォッカ、食うぞ。」
「え!?食べちゃうんすか!?」
「バカ、失敗作の方だ。」
えぇ!?(泣)
な、なんで…
「捨てちゃえばいいじゃないすか。」
「もったいないだろ。それとも何か?俺の作ったもんが食えねぇっつうのか?」
「いえ………。」
しぶしぶ失敗作クッキーを指でつまみ、口に運んだ。
………………………………………不味い。
「兄貴も食ったらどうですかい?」
「そんな不味そうなもん俺に食わせる気か?」
「いえ……………。」
えぇ!?
さっき『俺の作ったもんが食えねぇっつうのか?』とか言ったじゃん!!!
こうして失敗作クッキーは全て俺の腹に収まるはめになった。
夕方。
買い物に行っていた麗華が帰って来た。
「いやぁ、買いすぎちゃった。」
「……………麗華。ちょっといいか?」
行けぇ!!!兄貴!!!
ファイトォォ!!!
俺は空気を読み、部屋を出て物陰から様子を見た。
「……ほらよ。」
兄貴が不器用な手でラッピングした箱を差し出した。
「え?今日なんか特別な日?」
「いいから受け取れ。」
兄貴に言われるがまま、麗華は箱を受け取った。
「開けていい?」
「あぁ。」
ラッピングを丁寧に外し、箱のふたを開けた。
「あっ、クッキーだぁ♪ありがとう。……そうか。今日…ホワイトデー///」
「まぁ…礼はしなきゃいけねぇと思ってな。」
クッキーをつまんだ麗華が、少し笑った。
「ジン…もしかして、作ったの///?」
「……買って来たんだよ。」
「うそだぁ。こんなクッキー、売ってる所なんてないよ(笑)」
「う、うるせぇ///!!嫌なら食うな!」
兄貴…照れくさいのはわかりますけど…、買って来たってのは無理が…ι
パクッとクッキーを食べた麗華。
その後すぐに笑って
「美味しいよジン♪ありがとうね。」
と言った。
麗華は気づかなかっただろうが、俺は見た。
兄貴の銀髪で隠れた顔が赤くなっている事を。
家●婦は見た
じゃなくて、ウォッカは見た!
(↑知らない人すみませんι)
こうして兄貴の人生初のホワイトデーは幕を閉じたのであった。
チャンチャン♪
つづく
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