自慢の髪
「ジン〜。教えてよぉ。」
「何もしてねぇっつってんだろ!」
「いいや、何かしてないとそんな綺麗な髪になる訳ないじゃん!」
私はジンの長くて綺麗な銀髪に触れた。
柔らかくてふわふわしてる。
手に乗せた髪がサラサラ〜っと落ちていく。
うーむ。美しい。
「でも、本当に綺麗っすよね。兄貴の髪。」
ウォッカもジンの髪を触る。
「触るな、ウォッカ。」
「えぇ!?ι俺だけ!?」
「鳥肌がたつ。」
「(`△´;)!!??」
言葉も出ずにショックを受けるウォッカ。
可哀想に…。
「お前もいつまで触ってる。絡まるだろ。」
「あー。ほら、そうやって髪を保護しようとする!」
ジンの髪には絶対何かある。
トリートメントとか、実は週に一回美容室に行ってるとか。
今日はその真相を突き止めるべく、ジンに質問攻め!!!
「トリートメントでしょ。専門の。」
「何もしてねぇって。強いて言えば…」
「強いて言えば…!?」
私とウォッカはジンに詰め寄った。
「 血 。」
「血…???」
「毎日毎日殺して、血を浴びて……そんで綺麗になったんじゃねぇか?」
笑いながら言うジン。
だが、こっちとしては全然笑えない。
ジンが(兄貴が)言うと本当の事にしか聞こえない(聞こえねぇ)……。
私とウォッカは顔を見合わせた。
冷たい風が頬を撫でる。
ウォッカはいつもと同じ格好だが、私も今はウォッカと同じ格好をしている。
抜き足。差し足。忍び足。
私とウォッカは只今ジンを尾行している最中。
はたから見たら不審者だ。
「行くよ、ウォッカ!」
「おぅ!!」
ジンの後をついて行く。
ジンがキョロキョロする度に電柱やら、壁やらに身を隠す。
なんだかスリルがあって楽しい。
と、ジンがある建物の中に入っていった。
急いで近寄って看板を見ると、¨バー・パネル¨という文字が書かれていた。
恐る恐る私達も中へはいると、中は薄暗くてゆったりした音楽が流れていた。
「ウォッカ、こんな店知ってた?」
「いや、初めて来る所だ。……あ、マスター。あそこの男性と同じやつを。」
ウォッカがジンを指して言った。
「あ。ウチも…」
「麗華は未成年だからダメだ。ミルクにしろ、ミルク。」
ぶぅー。
ウォッカのケチ。
(いや、ダメだろ。普通。)
少しして、マスターがグラスをウォッカの前に差し出した。
「ホワイト・レディです。」
ホワイト・レディ?
白い女性?
「ジンベースのカクテルだよ。」
へぇ。
ジンベースの…。
ウォッカがグラスを口元へ運ぶ。
「おぉ!!美味い!兄貴、こんないい店知ってるなら教えてくれりゃいいのに…。」
少し落ち込むウォッカをよそに、私はジンの方を見た。
ジンが席をたつ。
「あ!ジンが行っちゃうよ、ウォッカ!!早く!!」
「え!?ちょ、まだ飲んでな…あぁ、もう!」
ウォッカは急いでホワイト・レディを流し込んだ。
そのせいか、ウォッカは咳き込みながらジンの後を追った。
次にジンが向かったのは………暗い路地。
「何ここ…ちょっと怖いι」
ウォッカの袖を掴むと、腕が震えているのがわかった。
「…ウォッカ、怖いの?」
「ばっ!バカ言え!!!怖いもんかι!!!」
と言いながらも全身ぶるぶるしちゃって。
私は可笑しくて笑ってしまった。
少し歩くと、目の前に壁が…
「え、行き止まり!?」
「兄貴…逃げやしたね。」
「ちょっと!ジンひどいじゃん!」
帰って私はジンに言った。
「何の事だ?」
「誤魔化さないで!私達の事まいたでしょっ!」
「あぁでもしなきゃ諦めねぇだろ。」
「むっ…。」
ふて腐れる私の頭をジンの大きな手が優しく撫でた。
そんな事されると、怒れない…
私は諦めて部屋に戻ろうとした。
「麗華、いい事教えてあげるわ。」
「べ、ベル姐!」
本当この人は…
どこから沸いて出てくるんだか。
「ジンの髪の秘訣は…」
ゴクッと唾を飲んだ。
「 血よ 。」
その後、私はジンの髪の秘訣は¨血¨という事で納得した。
つづく
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