シルバーブレット




抜けるような青い空。
久しぶりに一人で外出。


「う〜んっ!気持ちぃ〜♪」

この間の大仕事もあって、なかなかゆっくりできなかった。
思いっきり伸びをする。

「さぁ、どこ行こうかなぁ〜。」

とはいっても、一人じゃどこに行ってもつまらないだろう。

……ジンと一緒がよかったなぁ。

まだジンのアパートの周りの地形を把握してないため、あまりウロウロできない。
ヘタに歩くと迷子になりそうだ。



そして数分後。
「…迷った。」
見知らぬ道が目の前に続いている。

「前みたいにジンが来たり……………しないよね。」

ジンに電話しようか…。
いや、今は仕事中。
邪魔する訳にはいかない。

「お嬢さん、こんな所で何をしてるのかな?」
「はひっ!?」
急に後ろから声をかけられて変な声を出してしまった。
「はは。驚かなくていいよ。怪しい者じゃない。」
「は、はぁ…。」

いや、十分怪しい者ですけど?

「ちょっと道に迷って…。」
「ほう。では、お付き合いしましょう。ここから先は怪しい奴しかいないしね。」

その怪しい奴がいる所にいるあなたも怪しい奴ですけど?
「どこに行くんだい?」


「いえ、どこという訳じゃないんです。ただ散歩してただけで。」
「ちょうどいい。俺も暇しててね。一緒にいいかな?」






私は、ニット帽のお兄さんと急遽一緒に町を回る事になった。

「そういえば、まだ名前を言ってなかったね。俺は赤井秀一。」

「……麗華です。」
見ず知らずの人にフルネームで名乗るには抵抗があった。
「麗華か。いい名前だね。」
そんなたわいもない話をしながら町を歩いた。

「ご飯食べようか。」
ちょうどお昼。
私のお腹ももう少しで空腹コールを鳴らすところだ。

私達は、近くのレストランに入った。
「えぇ!?あ、赤井さん、FBIなんですか!?」
「うん。でもこの事は内密に。」
……ヤバいじゃん!
FBIなんかと一緒にいたら…組織の人間だってバレちゃう。

いや、待て。
もしかして、もうバレてたり…。
ようし。こっちからFBIの情報を取ってやる!
「FBIって事は、なにか大きな事件とかに取り組んでいるんですか?」

「そうだね。今はある大きな組織の事を調べてるんだよ。」
絶対、私の組織だ!

「へぇ。凄い!でも、大丈夫なんですか?狙われたり…。」

「あはは。大丈夫。あんなヘタレ、どうって事ないよ。」
へ、ヘタレ!?
ま…まさか…ジンの事じゃ…。
「ヘタレ?そんな人がいるんですか?」
「あぁ。ヘタレ長身長髪ヘビースモーカー野郎(笑)」
あ゛ぁ!?
ヘタレ長身長髪ヘビースモーカー野郎!?
もろジンじゃん!
「へ、へぇ。そんな人がいるんだぁ。」
作り笑顔で顔が吊りそうだ。

……このニット帽野郎。絶対殺す。

「あれ?気分でも悪いの?顔がひきつってるよ?」
そう言ってニット帽野郎が触れようとしてくる。
すると、目の前を何かが通った。
「きゃっ!」
奥で女性店員が声をあげた。
グラスを割ってしまったらしい。
突然の音に驚き、ニット帽野郎は手を引っ込めた。

「あ。じゃぁ…そろそろおいとまします。」
「途中まで送るよ。」

私達は店を出た所で見覚えのある車を見つけた。

車の持ち主は車から降りて近づいてきた。
ジンだ。

「おや?奇遇だな。こんな所で会うなんて。」

ニット帽野郎の目付きが鋭い。

「ふん。FBIもこんな所で道草食ってるくらい暇なんだな。」

チャキっと機械音が隣で小さく聞こえた。

ニット帽野郎の内ポケットから銃が覗いてる。

「人混みの中でそんな物騒な物出すなよ。被害が出るぜ。」
ジンは、くくっと喉で笑っている。
ニット帽野郎が悔しそうな顔をして銃をしまった。

ジンが私に向かって軽く顎を動かした。
私も軽く頷き、ニット帽野郎から離れて走り去った。





「女といちゃついてる暇があるんだったら、俺達を捕まえる方法を考えたらどうだ?」

「いや。つい可愛いかったからね。それに、いつまでも君達を野放しにしとくつもりはないよ。」

「ほぅ。言うようになったじゃねぇか。このニット帽野郎。まぁ、精々頑張るんだな。俺達は捕まらねぇよ。」
「捕まえてみせるさ。」





ジンがニット帽野郎と別れたのを見計らって私は駆け寄った。

「何あのニット帽野郎。」
「……シルバーブレット。」
ジンが小さく呟いた。
「え?」
「俺達組織を一撃で倒すと言われる奴の事だ。」
「シルバーブレット…。銀の弾丸…。」
何故かその名を聞いて、私はコナン君の顔が浮かんだ。

シルバーブレットは、赤井秀一じゃない。


銀の弾丸は
…………江戸川コナン

これから、何かただならない事が起きる。
そんな予感がしてならなかった。



*おまけ*


偶然。
本当に偶然だった。

仕事の帰りに麗華を見かけた。

しかし、その横には赤井秀一。

何で奴と一緒に…
まさか、捕まったんじゃ…!

急いで車を止めた。
「ちょっ…兄貴、何ですかい!?ι」
「黙ってろ!!!」
俺は苛立ちのあまり、ウォッカに怒鳴ってしまった。
麗華とニット帽野郎が向かったのは、オシャレなレストラン。
……何ナンパしてやがんだアイツ。

「あ、兄貴…ι?……!(あっ!麗華が赤井と…!それで兄貴、とてつもない殺気が…。触らぬ神に祟り無しだな。)」

じっと見ていると、赤井が麗華に触れようとした。

ピュン!!!

ちょうど麗華達が座ってた席の窓が開いていたため、咄嗟に銃で麗華と赤井の間を狙撃した。
流れ弾が女性店員の持っていたグラスに当たってしまった。
「ちょっ…町中で撃っちゃダメですぜ兄貴ι」
「ちっ。いっそ殺っちまえばよかったぜ。」
「(えぇ!?ιあ、兄貴!?)」

麗華達が店から出てきた。

俺の女に手ぇ出す奴ぁ、シルバーブレットだろうが俺が瞬殺してやる。

俺は車から降りて、二人に近づいて行った。

つづく



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