バレンタイン




2月14日。
それは世界中の女性にとってvery very大切なイベント。
まさに、人生最大の超特別イベントなのである。

「きゃあっ!!」

そう。
ここでも家庭科が苦手な一人の少女が、茶色いドロドロの物体と格闘していた。

「ぬおぉう!何故上手くできないんだ!!!」

私…やっぱり家庭的じゃない。

立派な高校生として、いやそれ以前に女として、こんなにも家庭的じゃないのは恥ずかしい。

自分の出来の悪さに落ち込んでいると、足音が聞こえた。

今日はジンもウォッカも夕方頃に帰って来るはずだから、今は誰もいないはず。

「Hi☆あ。やっぱり作ってたのね。」
「ベル姐!」

おぉ!
心強い助っ人登場!

「あらあら。ちょっとこれはひどいわね。」
ベル姐は、散らかったキッチンを見渡して言った。

と、そこでベル姐が止まった。

「まさか麗華、チョコの溶かし方もわからないの?」

ベル姐の目線の先には焦げて鍋にこびりついているチョコレート。

「……やっぱり間違ってた?」

呆れた顔をするベル姐。

「しょうがないやね。教えてあげるから、愛をこめて作るのよ。」
「イエッサー!」





なんとか陽が沈む前に完成した。

少ししてすぐにジンとウォッカが帰って来た。

二人ともソファーで一休み。

よし。まずはウォッカから…

「はい、ウォッカ。」
「えっ!?お、俺に!?」
「うん。いつもありがとう♪」
「……麗華。」

ウォッカがちょっと声を震わせて言った。

次はジンだけど…
…ドキドキして渡せない。


勇気を出すんだ麗華!!!
ファイト!!!

「じ、ジン。これ…」
「なんだこれは。」
「甘いの嫌いだろうけど…チョコレート。」
「……」
無言でジンは包みを受け取った。

箱を開けると、いびつな形をした茶色い物体。
「…食えるんだろうな。」
「失礼な!!!形は悪いけど、味はいいと思うよ。」

指でチョコレートを少し折り、口元へ運ぶジン。

………どう?

「…甘かった?」
「いや…美味い。」

やったぁ♪
大成功!!!

「じゃ私、シャワー浴びてくるね。」


私は、足取り軽くシャワー室に向かった。




「兄貴!よかったっすね。」
「あぁ?」
「だって兄貴、朝からチョコレートもらえるか心配で、商談どころじゃなかったでしょ。」

「……」

「俺ももらいました!人生初のバレンタインチョコ!兄貴はモテるから初じゃないでしょうけど。」


そういうわけでもない。

確かに今までチョコはたくさんもらったが、受け取ったのは初めてだ。
今までずっと「甘いのは苦手だ」と言って
もらわなかった。


人生初のバレンタインチョコ。

美味かったぜ。

つづく



よかったらポチッとお願いします








- 29 -


*前 次#