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「あれから魂の減少は見られません。きっともう大丈夫だと思いますよ。」
銀の髪をなびかせながら、アークはニコリと笑う。
來宵との一件があってから数日が過ぎた。始まりの草原は再び平穏な日常を取り戻そうとしていた。命の怪我も少しずつ回復している。
「そうか……。なら良かった。」
草原に寝転んでいたリヒトが起き上がりながら安堵の表情を見せた。まだ少し疲れが残っているように感じる。
「ああ、そうだ。アーク、お前に……。」
「リヒトー!!」
リヒトの言葉を遮り、小さな桃色の少年がこちらへ走ってくる。
ぴょこぴょこと走る彼はだいぶ元気になったようだ。むしろ力が有り余って仕方ないという感じだ。
命はその勢いのままリヒトに抱きつく。
「ごふっ……!?」
「ち、父上っ!?」
抱きつくというよりも体当たりに近い命の体を受け止めるも、耐えきれず再び寝転がる形になる。つまり命がリヒトに馬乗りになっている。
アークが驚きの声をあげるが命はお構いなしだ。
「……ごほっ。み、命、もう大丈夫なのか?」
苦笑いしながらリヒトはニコニコ笑う命を見上げる。
怪我を負った命は療養のため、あの時以来この草原には来ていなかった。数日ぶりにリヒトに会うのが相当嬉しいようだ。
「大丈夫だよ。これでも再生力はある方だからね。」
桃色の尾が嬉しそうに揺れている。
「そ、そうか。……命、悪いが退いてくれないか? く、苦しい……。」
命はリヒトの腹部に乗っている。いくら小さいからと言ってもそこそこ重い。
「しょうがないなあー。」
命は渋々リヒトから降りる。アークがほっとしたように苦笑した。