「來宵、俺を殺したいならいつでも相手してやる。ずっと一人じゃ、寂しいだろ?」

リヒトはパチンと片目をつぶり、からかうように言った。
その言葉を聞いた來宵は、ふらりと立ち上がる。ぽたぽたと血が流れる。
そして痛みを我慢し、ニヤリと笑ってみせた。

「……汝は偽善者じゃな。ふん、寂しいのは汝じゃろう? おもしろい、その誘い、受けてやろう!!」

力の限り叫んだ。
不思議と涙は止まっていた。
リヒトはそんな來宵を見てほっとしたような顔で、この寂しく虚無の世界から姿を消した。昔のように、優しい笑顔で。

「……くだらんな。」

來宵はため息をつく。少し心が晴れ晴れとしたような、軽くなったような気がした。
まだ憎い気持ちはある。恨めしい気持ちもある。だが、もう十分わかった。

「……あそこは我がおるべき場では無いの。」

ふらふらと歩き出す。これからもこの場で孤独に暮らしていく、それが自分の運命なのだと割り切って。
だが、少しだけ嬉しかった。彼が自分を認めて……受け入れてくれたようで。

もう昔のようには戻れないだろう。
あの頃の思い出はどんなことがあろうと消えることは無い特別なもの。それだけを支えにして、來宵は一人、冥界の果てで生きていく。

……大好きだった父に貰った金のピアスが寂しげに輝いていた。






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