「な……にっ!?」
禊が振り返れば、目の前は漆黒の闇。その闇の向こうでは來宵が妖しげに笑っていた。
禊は体勢を立て直し、その闇を睨む。油断した、完全に。まさか背後をとられるとは思わなかった。
「……くそっ!」
禊は腕に集めた力をその闇にぶつけ、衝撃を和らげたが、あまりにもその闇の力は大きすぎた。
瞬間、爆発が起きる。
その爆発の衝撃で禊は吹き飛ばされ、岩に激突した。
「……禊っ!?」
リヒトは禊に駆け寄る。
ふらふらと立ち上がった彼の体からは血が流れていた。彼の小さな体には、衝撃が強すぎたのか、立ち上がるのがやっとのようだ。
リヒトは禊の体を支えようとするが、彼はそれを拒む。
「……っ。俺に、触んな。はあ、はあ。」
言葉とは裏腹に、彼の体はふらりと傾く。
それをリヒトはすかさず支えてやる。
「禊、無理はするなと……。」
「……うるせえ、よ。馬鹿……やろう。」
スッと禊の体が小さくなる。どうやら意識を失ったらしく、本来の姿に戻ったようだった。
「……すまない。」
意識の無くなったら彼を寝かせ、リヒトはぼそりと呟いた。
そして立ち上がり、笑みを浮かべている來宵を睨みつける。リヒトの目を見て、來宵は満足げに目を細めた。
「やっと本気になったかのう?」
その言葉を聞いて、リヒトの顔が歪む。
そう、禊との戦闘は彼を本気にさせるためのものでしか無かったのだ。來宵の狙いはリヒトただ一人。最初から禊と真っ向勝負する気などさらさら無い。
「いくらお前だろうが許さない。俺の大事な家族をよくも……。」
リヒトは腰の飾りを手に取る。両手に剣、そして余った2個の飾りは2本の剣となり宙に浮かび上がる。計4本の剣を、彼は武器としている。