そして來宵も禊に向かって走り出した。
その姿を見てリヒトは思う。自分のせいで、來宵はこんなにも歪んでしまった。自分が逃げたばっかりに、彼は……。

「俺は、どうしたらいいんだ……。」

ぎゅっと唇を噛む。このまま感情を殺して彼と戦うのはあまりにも辛い。
そんな思考を遮る爆音。
舞い上がった土煙から來宵と禊が飛び出す。

「さすがはあいつの子どもだ。力だけはあるみてえだな?」

地面に着地した禊はゆらゆらと尾を揺らし笑う。最近表に出ていなかったせいか、とても楽しそうだ。主人格は命であるため、表に出るのはよっぽどの時しか無いのである。

「……言ってくれる。汝こそ始祖の割には力が無いのう? これが本気か?」

來宵もまた、楽しそうに笑う。この状況を楽しむだけだ。自分の命など、どうでも良かった。

「は? 殺さないように手、抜いてんだ。誤解すんなよ!!」

禊は片腕に力を集め、地を蹴る。
本当は手など抜いていない。禊が思っていたよりも、彼の力は強大だった。來宵は傷を負っているにもかかわらず、余裕だと言わんばかりの動きをする。まるで化け物だ、禊は思う。

「……遅いぞ?」

声がしたのは、自分の背後。






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