「すまない、命。お前がそんな気持ちだったなんて気づかなかった。」

より強く彼を抱きしめる。
今は後悔よりも先にすることがある。昔、命が俺を支えてくれたように、今度は俺が命を支えてやらないと駄目なんだ。

「ぼくを、みてよ……ぼくには、きみしかいな、いんだ。もうこんなきもち、いやなんだっ……!!」

命は想いを吐き出す。もう自分が何を言っているかわからなかった。

「命……。」

彼の気持ちを聞いて、少し安心した。なにより素直に話してくれたことが嬉しかった。
命は、自分の気持ちを心の中に追いやってしまう癖がある。だいたいは“中”にいる彼らがなんとかしてくれるが、今回はそう簡単にはいかなかったらしい。

「……まったく、世話の焼ける始祖さまだ。」

リヒトはにこりと笑う。笑顔というより苦笑に近いが。
風が命とリヒトの髪をなびかせる。

「……俺はずっとお前のそばにいる。」

命が顔をあげ、リヒトの顔を見る。絶えず流れ落ちる涙が、草原に吸い込まれていく。

「リヒト……僕のこと、好き?」

少し落ち着いたのか、言葉ははっきりとしていた。突然の質問に驚いたが、リヒトは笑顔で答えてやった。

「当たり前だろう?」

「ありがと、リヒト。」

命も笑う。まだ涙は流していたけれど。
二人はしばらく、ぎゅっと抱きしめあっていた。



白はどんな色でも柔らかくて綺麗な色にかえてくれる。
感情も同じ。白は醜い感情を綺麗にしてくれる……

魔法の色なんだよ。



end






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