その時、誰かにいきなり後ろから抱きしめられた。自分にまわされた腕を見れば、すぐに誰だかわかった。
耳元で優しい声が囁く。

「今日は随分と元気が無いみたいだな……?」

「……遅いよ。馬鹿リヒト。」

命は彼の腕をぎゅっと握る。冷えた心があたためられたような気がした。

「すまない。」

リヒトは、命の気持ちを察してか、あえて理由は言わなかった。彼には言い訳が通用しないと知っているから。
何故かリヒトは、他人の気持ちを読むのがうまい。それは神として持つ力なのかは定かではないが。

「……で。俺に何か用か?」

命から腕を離し、リヒトは立ち上がる。少し呆れた顔をして。

「……ただ、寂しかっただけ。」

ぼそりと小さく命が呟く。すると、リヒトはうまく聞き取れなかったのか、命の目の前にしゃがみ込む。

「そんな弱々しい声じゃ、聴こえないな。」

悪意があるわけではない。ただ、いつもと違う命を元気づけようとしているだけだ。

「……っ。寂しかったのっ!!! 馬鹿リヒト!!」

命はむきになり、彼に怒鳴りつける。彼は驚いたように目を丸くしたかと思えば、にこりと笑顔になった。
彼の笑顔は、見とれるほど綺麗だ。

「よく言えました。」

リヒトはポンポンと命の頭を撫でてやる。普段なら子ども扱いするな、と怒る命も今日は大人しくしていた。






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