見渡す限り一面の緑。ここは“はじまりの草原”。
終わりなど無いくらい広いその草原に、桃色のポケモンが座っていた。
彼は、始祖と呼ばれる伝説のポケモンだ。名前は命を生み出した者から取って“命”。

「おっそ……。」

命ははあ、と深くため息をつく。彼は今、ある人と待ち合わせをしているのだ。
その彼が大幅に遅刻している。

穏やかな風が吹く草原は柔らかい自然の香りが満ち溢れている。ここは、命と彼にとって特別な場所。

「一人は嫌だ。」

命は体育座りをし、腕の中に顔をうずめる。
一人になると、負の感情ばかり出てきてしまう。

なんで彼はこの世界で一番力を持つ最高神……創造神なのに、恐れられることもなく、ポケモンにも人間にも愛されてるのだろう。
そんな彼に、いや彼に近づく者たちに僕は……嫉妬してしまう。たまに、なんで生き物なんて創ったのかなって。

「僕は始祖なんだ。こんな気持ちになるなんて、人間や普通のポケモンと同じじゃないか。」

こんな醜い感情なんか、そう呟いて命はぎゅうっと自身を抱きしめる。

一人は怖い。あの時は暗闇で一人ぼっちだった。寂しくて寂しくて、気づけば自分の中に違う自分を生み出していた。
彼らは僕を救ってくれた。ずっと僕の家族だ。

『命。』

脳内に二人の声が響いた。

「……わかってる。大丈夫だから。」

命は彼らに、自分に言い聞かせるように言う。時々、昔の記憶が蘇ることがある。そんな時、彼らは命を支え、不安や恐怖を取り除いてくれるのだ。






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