彼には、昔のような無邪気さは全く無かった。
冥界で孤独に生きてきた彼の心は、荒んでしまっていたのだ。

「……。」

リヒトは來宵を無言で見つめている。そんな彼に來宵の眉は僅かに歪んだ。

「何故黙っておる? 我が怖いのか?」

リヒトが黙っているのが気に食わないのか、來宵はリヒトを睨みつける。そして、二人の方へ歩き始めた。

「恐怖というものは生き物にとって大事な感情じゃ。だからの……」

すると、二人の方へ向かって歩いていた來宵の姿が消えた。
命は驚き辺りを見回しているが、リヒトは動じない。

瞬間、リヒトの目の前に來宵が現れる。そして、リヒトの頬に手を伸ばす。
自分の身長ではリヒトの顔に手が届くはずがないとわかっているのか、來宵は命と同じように宙に浮いていた。

「安心するがよい。汝は“生き物”じゃ。無慈悲でも無感情でも無い。それは、我が一番知っておるからの。」

にこりと笑う來宵。
二人の視線がぶつかる。同じ色のはずの真っ赤な二人の目は、命にも違う色に見えた。

「さて、いい加減何か言ったらどうじゃ? その口は何のために……」

來宵の言葉が途切れた。二人の隣にいた命は目を見開く。






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