外は猛吹雪。
ヒュオー、という風の音がこの薄暗い洞窟にまで聞こえてくる。
そこに二つ、影が見えた。それはこの洞窟“ジャイアントホール”に住まう竜、灰歌と真っ白な装いに包まれた炎竜、白謳だ。
「ねえ。」
灰歌は白謳に問いかける。
「どうしてボクと目を合わせないの?」
悲しそうな顔を目の前の純白に近づける。パキパキと、空気が凍る音が響いた。
「どうして“ボク”を見てくれないの?」
灰歌は問う。しかし白謳は答えない。いや、答えることが出来ない。
今、彼は体中から赤い血を滴らせている。服も所々凍りついているようだった。
「……っ!!」
そして、白謳の首を青白い腕が掴んでいるのだ。
それは紛れもなく目の前にいる灰歌の腕。
ぎちぎち、とその腕は白謳を苦しめていた。
「ねえ。なんでキミは、ボクを独りにしたの? 置いて行ったの?」
灰歌の腕に力がこもる。完全に凍りついた手が白謳の白い首に食い込んだ。
「…っ! あな、たは、何を……言っているの、です…?」
白謳は呼吸を妨害する腕を掴み、声を絞り出す。はぁ、はぁ、と呼吸をするたびに真っ白な息がでる。
「……忘れたの? なんで? なんで? なんで!?」
「か、は…っ!!」
ぎちぎちと首を絞め付ける灰歌の目からは、いつの間にか涙がこぼれていた。
しかし、その涙は自身の体温によって個体となり、こぼれ落ちることはない。
「キミ達は、ボクを知らない。ボクはキミ達を知っているのにっ!!」
灰歌は白謳の首から手を離す。
「…っ!? かはっ! ごほっごほっ!! はぁはぁ。」
白謳は、首を押さえ灰歌を睨みつけた。
「はぁ…はぁ、あなたが、何を言いたいのかが、私には理解出来ない。一体私に…何を求めているのですか!?」
灰歌はニコリと笑う。
今まで白謳の首を絞めていた腕は、彼の頬にそっと触れる。
凍りついたその手は、弱った白謳の体温を奪う。
「ボクは、キミが好きだよ。しろ。」
「何を言って……っ!?」
突然の痛みに白謳は眉をひそめた。
灰歌のもう一つの腕は、白謳の腹部に深く突き刺さっているのだ。