しばらく道を歩いていくと、中心に出た。
そこには、1つの影。
白く長い髪に4本の角。そして金色に輝くピアス。
それは間違いなく、その人物が“彼”であることを示しているのだ。
“彼”はリヒトたちに背を向けたまま、言葉を発する。
「随分と遅い迎えじゃったのう?」
リヒトは大きく深呼吸し、それに答える。
「……久しぶりだな。來宵。」
來宵と呼ばれた“彼”。そう、彼はリヒトの息子である來宵だった。
來宵はくるりと回り、二人の方を向く。
「久しぶり、じゃと? ふん、笑わせる。」
にやりと笑みを浮かべる來宵。その顔は昔と全く変わっていなかった。変わったのは、身長と目つき。身長は150ほどに、目つきは鋭くなっていた。
「……こんなことをして、何のつもりだ?」
リヒトは表情ひとつ変えず、淡々と話す。
しかし、命は気づいていた。彼の体が、小さく震えていることに。
「リヒト……。」
命は震えるリヒトの手をぎゅっと握った。
君なら、きっと乗り越えられるよ。
命の思いに応えるように、リヒトも命の手を握りかえす。
「我が居ない世界は、平和じゃったか? ふふ、さぞ楽しい暮らしをしておったにちがいない。」
來宵は楽しそうに笑う。しかし、その目には、怒りや憎しみが満ちていた。