あれから数百年……。
乱れた世界の秩序も、すっかり直った頃。
世界には“地方”が確立した。生き物がそれぞれの場所で暮らし、それぞれの仲間と生活していくようになった。
たまに争いも起こる。しかし、生き物たちは平和な時間を過ごしていた。
それはまた、始まりの草原も同じ。
リヒトと命は互いに支え合い、世界の行く末を見守っている。
しかし、少し気になる問題が発生していた。
「最近、魂の数が激減しているらしいですよ。生まれ変わるはずだった魂も、消えて無くなっているようです。」
この世界を裏側から異変に気づいた破れた世界の王、アークは目の前の父親に報告する。
破れた世界には、世界のすべてを見渡せる不思議な水玉がある。
「……魂が激減している?」
リヒトは眉をひそめた。昔より長くのびた白い髪は金色の金具でまとめられている。
「自然現象では無いようです。明らかに何者かによって魂が消されています。」
アークはリヒトを心配そうに見つめる。
そう、魂が消えるというのは、冥界で何かがおこっているということなのだ。
あの場所はリヒトにとって悲しい思い出しかない。
「つまり、冥界で何か異変が起きてるってことだよね?」
リヒトの隣で浮いている命が話に混ざる。
あえてアークは“冥界”という単語を言わずにいたのに、命は何も気にせずにその単語を口にする。
「そういうことになりますね。」
はぁ、とため息をもらし、アークは肯定した。