私達が向かっているのは、ある場所。


雨で湿気が多いせいか、裏穹の髪はボサボサだ。
私達は会話も無く歩く。

ざぁーっという雨の音だけが朝の道に響いていた。









目的地に着いた。
そこは、静まり返った小さな墓場。
その中の一つの墓の前に私と裏穹はしゃがみこむ。

この場所に、私達の元主人が眠っている。

「…あの日も、確か雨でしたね。主人(マスター)。お久しぶりです。元気でしたか?」

墓に向かって敬語で話している棕櫚を、冷たい目で見つめる裏穹。

「よく言えるな…?そんなこと。貴様に主人と話す資格など無かろうが。」

裏穹の目は私に対する殺意で満ちている。まぁ、仕方がないことなのだろう…
裏穹は、主人が大好きだったからな。

「裏穹…。今日だけは、勘弁してくれ?主人が悲しむだろう?」

私は自分の片割れを見つめる。
今日だけは、ケンカ(殺し合い?)をする訳にはいかない。

「…わかっておるわ!そんなこと。だがな−」

「裏穹…!」

「…っ!
…今日だけ、だからな!」

私達はその墓に花を添え、手を合わせる。

裏穹はさっきとは違い、悲しそうな顔をしている。

「…帰るか。」

私達は立ち上がり、墓に背を向ける。

まだ、雨は止まない。






    prevnext


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -