さぁー、さぁー…。
風が草木を優しく撫でる音がしている。
一面の緑に広がるひまわりの花。
丘の上にある家の窓から、うとうとと外を眺める者が1人。
髪は灰色、目の下と額に黄色の刺青。
彼は風に揺れるひまわりを眺めながら、亡き主人を思う。
−あの人は、ひまわりが大好きだった……。
『棕櫚。見てご覧? ひまわりが咲いているよ。』
『……綺麗、ですね。』
一面黄色に染まったその場所に、1人の人間と1人のギラティナ。
『ねぇ。ひまわりの花言葉、知ってるかい?』
『急にどうしたんです? マスター。』
マスターと呼ばれた人間は笑顔で、パートナーを見つめる。ひまわりのような笑顔だった。
『ひまわりの花言葉はね、“愛慕”“崇拝”“光輝”……そして』
彼は先ほどの笑顔とは打って変わって、まじめな顔になる。
『“私の目は、あなただけを見つめる”』
『……それがどうかしましたか?』
彼の隣でギラティナは表情一つ変えず、淡々と会話をする。
『まったく。棕櫚は冷めてるなぁ。
つまり、俺はお前達だけを見てる。お前達が居れば、それでいいんだ。』
彼は再びひまわりのような笑顔になった。
『マスター。私も、あなたが居れば、それでいい。これからも、ずっと……。』
『ははっ!お前はひまわりみたいだな。いつまでも俺を追いかけてくるってことか!!
どんだけ俺が好きなんだ?』
『……っ!?そういう意味ではありませんっ!』
『冗談だよ、冗談。
……そうだな。これからもずっと一緒に居れたらいいな。』
『……そうですね。』
今まで無表情だったギラティナも微笑む。
『俺とお前、そして裏穹。ずっとずっと一緒だ。』
ひまわり畑を2人は眺める。そこでは、穏やかな時が流れていた。
さぁー、さぁー…。
風がたくさんのひまわりを撫でる。
あなたがそこで、笑っているようだ。
今なら、あなたに伝わるでしょうか。
“私の目は、あなただけを見つめています”