灰音と黒詠が見つめる中、灰歌は青ざめている白謳の口にチョコを押し込んだ。
「むぐ……。」
さあー、と白謳の血の気が引いていく。
手に持っていたフライパンが床に落ちた。
同時にぽろぽろと白謳の目から涙が落ちる。
「おい、しすぎて、涙が……。」
白謳は灰歌に微笑んだ。
そのまま白謳は後ろに倒れた。
「白謳!?」
黒詠が白謳のもとに駆け寄り、抱き起こす。
「おい!! 白謳!! しっかりしろ!!」
必死に白謳に呼びかける黒詠。すると、白謳が薄く目を開き、黒詠の服を握りしめた。
「こ、黒詠。あとは、頼み……ます……ね。」
がくっと白謳は意識を失った。
「え……。それ、どういう意味だよ。俺にあのチョコを食えって言うのかよ!? 無理だ。俺には出来ねえよ!! まだ死にたくない!!」
黒詠は白謳を力いっぱい揺さぶる。
しかし、白謳に反応はない。
「あの。黒詠さま?」
ふいに灰音が黒詠の前にしゃがみこんだ。灰歌は、白謳はおいしすぎて倒れたと思っているらしく、ニコニコと満足そうだ。
「私のチョコは、ちゃんと味見しましたから受け取ってくださいますよね?」
今までの悲劇を見て、不安になった灰音は目に涙を溜めながら黒詠を見つめる。