ざざぁぁーん、ざざぁぁーん。

海は穏やかに波打っている。
太陽が沈み始め、オレンジ色の光が海に反射していた。

「……。」

そんな海を眺めている、不機嫌な海羅。
浜辺に腰を下ろし、光の反射によって眩しそうにしている。

「最悪。」

ボソッと呟く。普段陸奥を下僕呼ばわりしている彼だが、陸奥が嫌いなわけではない。むしろ逆だ。

「約束したのに。」

そばにあった貝殻を海に投げつける。

ぽちゃん。

その音は、波にもみ消された。
しかし、響く音があった。

「おーい。海羅ー!!」

遠くから、自分を呼ぶ声がする。
それはどんどん近くになる。

「海羅! 探したぞ。」

海羅は振り向かずに、立ち上がる。

「何? 僕になんか用?」

海を見つめたまま、海羅は言う。太陽がもうすぐ沈みそうだ。

「……ごめん。海羅。」

「ごめん? いまさら思い出したわけ!? 本当に…… 」

海羅は振り向く。

すると

ふわっ……

目の前には花束が。
海羅が好きな花ばかりを集めたものだ。

「……っ!?」

もちろんその花束は陸奥が持っている。
海羅は驚き、目を見開いた。

「ごめん。海羅。俺が悪かった。だから、お詫びの気持ち、受け取ってよ。」

陸奥は少し恥ずかしそうにしている。
でも、笑顔だった。

「……。」

「海羅……?」

陸奥の脳裏にまたなんかしたか、と不安がよぎる。
海羅はうつむいていて、顔が見えない。

「……っかじゃないの?」

「え?」

「ばっかじゃないのっ!? 遅いんだよ!!」

勢いよく顔を上げた海羅の目には、いっぱいの涙が。
そして勢いにまかせて陸奥に抱きついた。

「バカバカバカバカバカバカバカバカバカ!! 陸奥なんか大嫌い!!」

突然のことに驚きを隠せない陸奥。
パサッと手から花束が落ちる

「……海羅。これからお祝いしようか?」

海羅の肩に手を置き、呟く。

「ほんと、最悪だよ。最っ悪。最低な男だよ。でも……」

海羅は陸奥の顔を見上げる。
ぽろぽろと流れ落ちる涙が、太陽の光を反射している。

「今日だけは、最高だよ。」

ニッコリと笑う。
きっと最初で最後の笑顔なんだろうなぁ、と思いながらも、陸奥は笑顔になった。

「それは、良かった。」




今日は最高で最悪の記念日。
海と陸上の、仲直り記念日。








end







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