「……と言うわけだ。なんか俺悪いこと言ったのか?」
自分は悪くない、と辻風に同意を求める。
辻風は再びため息をつく。
「いや、陸奥。残念だがそれはお前が悪い。」
いつもは自分の味方をしてくれる辻風の言葉に、陸奥は驚く。
「な、なんでだよ!? てか、そもそも今日は何の日なんだよ?」
「お前、本当に覚えて無いのか?」
「あぁ、まったく記憶に無い。」
はぁぁ、と頭を抱える辻風。これは自分が言って良いことなんだろうか。
「海羅が怒るのもわかるな。こんな大事な日を忘れてたらなー。」
「……だからっ!! 今日は何の日なんだよ!? さっさと教えろ!」
なかなか言おうとしない辻風に苛立つ陸奥。
「はぁ。じゃあヒントをやろう。今日は海と陸上の争いが終わった日だ。つまり?」
「……!!」
陸奥はハッとした。そう、今日は海と陸上の戦いが終結した日。
つまり、海羅と陸奥が仲直りした特別な日なのだ。
陸奥と海羅は10年に1度、二人でこの日を祝おう、と約束していた。
そんな大事な日を、陸奥はすっかり忘れていたのである。
「……俺、海羅にひどいこと言っちまったんだな。」
はぁぁぁ、と辻風以上に深いため息をつく。
陸奥の心はさっきまでのイライラは無くなり、罪悪感でいっぱいになっていた。
「どうすれば、海羅は許してくれるだろうか……。」
頭を抱えて、辻風に問いかける。
しかし辻風は冷たく言い放つ。
「そんなの、自分で考えろ。私にばかり頼るな。」
これは、保護者としての台詞。成長させるには、自分で考えさせた方がいい。
「まぁ、あの海羅がそう簡単に許してくれるはずが無いだろうがな。」
そう言って辻風は、どこかへ飛び去ってしまった。