「えへへ。我、偉い?」
來宵は頭を撫でられながら、照れたようにリヒトに尋ねる。
今まで一緒に過ごしてきたが、あまり褒められることは無かったからだ。
「ああ。偉いな。」
リヒトはニコッと笑う。生き物の存在しないこの冥界で二人は親子としての会話をした。
しばらく來宵と話をし、リヒトは立ち上がる。
「さ、て。俺はそろそろ守護者を探しに行かなければいけない。だから、地上に戻る。來宵、しっかりこの世界を守るんだぞ。」
“守護者を探す”
そんなの嘘だよ。我にだってわかる。とと様が我を避けてることだって知ってた。
覚えてないけど、きっとあの時我は悪いことをしたんだ。
來宵はわかっていた。何もかも。
でも、リヒトの悲しい顔は見たくないから。
「うん。ちゃんと守るよ。だから、」
涙が出そうだった。泣いちゃ駄目、駄目だよ。
「絶対迎えにきてね?」
「絶対、迎えに来る。」
リヒトは來宵に背を向け、歩き出す。
そして、孤独な世界から姿を消した。
「とと様……。待ってる、待ってるから。うう、信じて、るから……。」
來宵の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。ぽろぽろ、ぽろぽろ。
一人取り残された來宵は、ただ涙を流すしかできなかった。