二人が向かうは、魂の寄りどころ“冥界”。
生ある者など誰一人いない、死者の魂が生まれ変わるのを待つ孤独な世界。

そんな世界に命ある者が現れた。

「着いたぞ。」

リヒトは抱いていた來宵を降ろしてやる。
來宵は周りを見渡した。
音も風も、何も無い。空は赤紫に染まり、青白い光……魂がふよふよと宙を漂っている。
すると、一つの魂が來宵の顔にぶつかった。

「……ひゃう!?」

ぶつかった魂は方向を変え、たくさんの魂に紛れて見えなくなった。
驚いた來宵は、リヒトにくっつく。
うるうると涙を溜めた目で、リヒトを見上げた。

「大丈夫だ。これは人に害は与えない。」

リヒトは來宵を撫でる。少し悲しげな顔で。
來宵はほっとしたようで、リヒトから離れる。しかし、片手はリヒトの服を掴んだままだ。

「行くぞ。」

リヒトは冥界の奥地を目指して歩き始めた。來宵もまた、必死にリヒトの後をついて行く。
カツン、カツン……。
ペタペタ……。
リヒトと來宵の足音が無音の世界に響き渡った。







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