一人草原に残ったリヒトは腕の中で、意識を失っている來宵を見つめる。
父親として、愛しい子どもを見つめるように。
しばらく來宵をぼんやり見つめていると、リヒトの隣に命が姿を現した。
「……おかえり、リヒト。やっぱりその子が関わってたんだね。」
「命……。俺は、父親として失格だ。」
隣でふわふわと浮かんでいる命を見ることは無く、リヒトは來宵を見つめたまま答える。
ただ今は後悔の言葉しか出なかった。
「僕はそんなこと無いと思うよ? 少なくとも、その子にとって、君は何よりも大事な存在でたった一人の父親なんだから。」
命はすべてを見透かしているよな青く透き通った目でリヒトを見る。
「……だが俺は」
「だーかーら! そんなこと言っても起きてしまったことは仕方がないんだよ。そんなこと君だってわかってるんでしょ!? だったら、後悔よりもまず先にすることがあるんじゃないの?」
「……っ!?」
命は俯くリヒトに珍しく声を荒げた。
そう、今は後悔よりも先に來宵をどうするかだ。
「その子、どうするの? 決めてるんでしょ?」
リヒトの考えはなんとなくわかる。でも、彼から直接聞きたい。
彼は父親として、創造神としての責任を果たさなければいけないから。
乱れてしまった世界の秩序を安定させるための方法を、僕は君から聞きたいんだ。
「來宵は……。」
リヒトは重い口を開いた。