アークは倒れた來宵を抱き起こし、そのまま抱きかかえた。
「どうやら、力を使い果たしたようです。よっぽど力を消費したんでしょう。」
リヒトがアークの元へ近づく。どこかほっとしたような、緊張の糸が切れたような顔をして。
「アーク……。戻ろうか。」
「そう、ですね。」
二人は小さな來宵を連れて、死臭漂う集落を後にした。
「この子、どうするんですか?」
アーク達が戻ってきたのは、見渡す限りの草原。
優しい風が吹く、始まりの草原。
「……ちゃんと、考えてはいる。」
リヒトは、アークの腕の中で気を失っている來宵の頭をそっとなでた。
アークには、それが不思議に思えた。
何故、あんな事件を起こしたこの子を優しく撫でることが出来るのか。
まるで、もう会わないと言わんばかりではないか。
「アーク。ご苦労だったな。戻ってもいいぞ。後は俺一人でも大丈夫だ。」
リヒトはアークの腕から來宵を抱きかかえた。
「では、私は破れた世界に帰りますね。……父上。無理をしては駄目ですよ?」
そう言って、アークは草原から姿を消した。