「來宵。お前は、俺と同じくらい強大な力を持っている。そのことは昔からわかっていた。だが、」

リヒトは來宵の言葉を気にも止めず、口を動かす。
彼の目は來宵を見ているようで、見ていないようにも感じられた。

「その力を制御させず、野放しにしていた。いつか、力を暴走させるんじゃないかと、可能性は考えてきたのに。」

來宵は初めてリヒト自身が生み出した子ども。初めてだったせいもあり、來宵はリヒトが思っている以上の力を持っていた。
來宵の見た目が子どものままであるのも、この強大な力によって成長が妨害されていたからなのだ。
リヒトは淡々と言葉を続ける。

「だが、まさか俺の気を引くためにこんな事をするとは、全く想像していなかった。」

隣にいるアークは何も言うことが出来なかった。いつも明るい父親が、こんな風に辛そうにしている姿を見たことがなかったから。
それに、今日まで自分に兄がいることを知らなかったから。

「全部、俺の責任だ。」

「とと様……?」

静かにリヒトの話を聞いていた來宵だったが、内容をうまく理解できないようで首を傾げている。
來宵には先ほどとは違い、子どもらしさが戻っていた。
だが、少し様子がおかしい。

「とと様……? とと様は悪くないよ? 悪いのは全、部……あ、れ?」

いきなり、ぐら、と來宵の体が傾き、そのまま赤く染まった地面へ倒れこんだ。

「あ……!!」

アークは素早く來宵に駆け寄った。
どうやら意識を失っているようだ。







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