「ひどい……。」
そうつぶやいたのは、リヒトの息子であり、破れた世界の王であるアークだ。
銀色の髪に角。そして十六歳ぐらいの外見をしている。
リヒトは、アークを連れて集落を訪れた。
目の前に広がるのは、一面の赤。
地面は集落で暮らしていたのであろう者たちの死体で埋め尽くされている。
生き物の気配など、まるで無かった。
「何が、あったんだ。」
リヒトは愕然としていた。今まで、こんな事は無かったのに。どうして今になって不幸なことが起きるのか。
「とにかく、先に進んでみましょう。父上。」
アークとリヒトは、集落の中を進んで行く。
進めば進むほど、死体の数は多くなり、死臭が立ち込めていった。
「一体誰がこんなひどいことを……。」
「……大体の目星はついている。」
アークの疑問にリヒトはぼそっとつぶやいた。リヒトはどこか悲しげで、とてもつらそうな表情だった。
しばらく進んで行くと、集落の中心らしき場所に出た。
するとそこには、小さな赤い影が。
髪も服も血で真っ赤に染めた小さな子ども。
リヒトにはそれが誰か、わかっていた。
「あの子、は……?」
アークがリヒトに問う。
「あれは、俺の一番目の息子。來宵。」
「え……?」
アークは疑問に思う。当たり前だろう。目の前にいる來宵という子どもは、明らかに自分よりも年下にしか見えないのだから。
自分よりもずっと小さな身長、見た目。
そんな子どもが、自分の兄とは考えられるはずがない。
「……とと様!!」
リヒトたちに気づいたのか來宵は、血に染まった体でこちらに走ってきた。