そこは、一面の草原。
サァーっと風が草を撫でれば、自然の香りが立ちこめる。
これはまだ、大陸が陸続きだった頃のお話。
世界の創造神が、たった一度だけ、涙を流した。
「命。居るんだろう?」
世界の創造神、リヒトは友人の名を呼ぶ。すると、桃色が目の前に現れる。
「呼んだ?」
命と呼ばれた桃色の足は、地に着くことはなく、空中に浮いている。
彼は、世界の成長をリヒトと共に見守る、生き物の始祖。
「世界もだいぶ安定してきたね。生き物たちも自分の力でしっかり暮らしてる。」
「そうだな。」
彼らがいる場所。見渡す限りの緑。
ここは、始まりの草原。全てが生まれた、世界の中心。
ここで、彼らは世界を見守っているのだ。
「もう僕たちが心配しなくても、世界はちゃんと生きていける。」
命は草原に降り立ち、リヒトにそっと寄り添った。
約50pほどある身長差のせいで、二人は親子のように見える。
「ああ、そうだ。命、紹介したい子が……」
「とと様ー!とと様ー!」
リヒトの言葉を遮り、トコトコとこちらに走ってくる小さな影。