炎と氷がぶつかり合った。
刹那、爆発が起きる。
「……痛。」
白謳は腹部を押さえる。目の前の狂気に集中していたため、自身の怪我のことを忘れていた。
爆発で起きた煙が消える。
灰歌は、爆風で吹き飛ばされたらしく、壁にもたれていた。
「う……。」
頭から血を流し、ゆっくりと立ち上がる。
狂気も殺気も先ほどより、よりいっそう強くなっているようだ。
「いたい。イタイ。痛いよ。しろぉぉ!!」
灰歌が両手を広げる。すると、周りに無数の氷の刃が現れた。
その刃は全て、目の前の白謳に向かい放たれる。
「……もう止めましょう?灰歌。私はあなたを傷つけたくありません。ですから、これで終わりですっ!!」
白謳の周りには青い炎が舞う。
めったに使わない、いわば最終手段。
白謳は炎を放つ。
その青い炎は竜のようにうねった。
灰歌の氷の刃はその青い炎に溶かされた。そして、灰歌をものみこんだ。
「うあぁぁ!!」
炎は洞窟の壁にぶつかり、消えた。
炎がぶつかった場所には、ボロボロの灰歌が倒れている。
「あ、う…。ぐぐぐ。」
灰歌は限界がきている体を無理やり起こそうとする。その体は、所々凍りついてきている。
力が暴走すると、制御ができず自身をも凍らせてしまうのだ。
「無理はしないでください。もう終わりです。」
白謳が倒れている灰歌に近づき、抱き起こした。
「はぁ、はぁ、うぅ…。し、ろ?」
白謳を見つめる灰歌の目に、もう狂気は無くなっている。
白謳は安心した。
「……大丈夫ですか? 少しは手を抜いたつもりなんですが。お互いボロボロですから、おあいこですね。」
「う、うあぁぁ。しろ。しろ。」
ぽろぽろと灰歌の目から涙がこぼれ落ちる。
「……っ。ごめんなさい。私はこれ以上、あなたに優しくするわけにはいきません。」
白謳はつらそうな笑顔を見せる。
大事な人の命を狙う彼に、優しくするわけにはいかないのだ。
優しくしたら、彼女を守れなくなってしまうから。
「……ボク、は、諦めないからね? 絶対、しろを…ボクのものにする、んだから。それと……。」
ニコッと笑って、灰歌は白謳の頬に手を当てる。
「……ごめんね。」
その手がスルッと落ちる。
「灰歌…?」
腕の中にいる灰歌は、スースーと寝息をたてていた。