ウサギ型(ロク刹)




久ぶりに地上に降りて買い出しに出かけたとき、真っ赤なリンゴが目に入ったから2つ買って部屋へと帰った。
袖で表面を拭き、一口かじると少し甘い匂いと味が口の中に広がり頬を緩ませる。
もう一口味わおうとしたとき、俺にこの味を教えた男が勝手に入ってきた。
「よっ!元気だったか?」と右手を上げて微笑むロックオン・ストラトス。
その笑みを無視してリンゴをかじろうとすると、横から手で伸びてきてリンゴを奪われた。


「リンゴはこのまま食うのもいいけど、歯茎が痛んで泣くはめにあうぞ?」
「俺がどんな食べ方をしようがアンタには関係ないだろう」
「そうはいくかよ。俺はお前の保護者兼恋人なんだから」
「いいから返せ」
「そう向きになるなって。俺がいいことしてやるから」


そう言って台所に入り、包丁を取り出してリンゴを適当な大きさに切りだした。
俺が始めに食べていた部分を削り、断りもなく食べてしまう。
それにムッとしていると「これくらい良いだろ〜」と軽い口調が返ってきて更にムッとなる。
この男をジッと観察しているから腹を立てるんだと思い、台所を背にしてベッドに座り、視界に入れないようにした。
新聞を取り、広げようとした瞬間に後ろからデカく重いものが覆いかぶさってきた。


「せっちゃん!一人にしないでよっ!」
「……おも」
「お前がそんな態度ばっかとるから俺はもう寂しいぞ!!」


「おれおれ〜相手しろ〜」といいながら俺の髪に頬を擦り付けてくる。
しつこくせがんでくるロックオンにそろそろ腹が立ってきて、俺は背中に引っ付いているロックオンをそのままに勢いをつけて後ろに倒れた。
その下で「ウゲッ」とカエルが潰れたような声を上げ苦しがる。
俺の腕を叩いて「ギブ!ギブ!!」と叫ぶから仕方なく退いてやったら、咳き込みながら起き上がった。


「酷いぜ、刹那!大人の俺でもこれは無理!」
「お前がしつこくするからだ」
「だってさ〜刹那冷たいし…!」
「だからとい」
「そうプリプリすんなって!可愛いけどさ〜」


そういいながら何かを口に咥えさせられた。
口に含んだ瞬間に、リンゴ独特の甘い匂いがにおって表情を緩めて、一口かじって首を傾げた。


「どうしてこれは変なところで皮の部分がないんだ?」
「それは、ウサギにしたからだよ。可愛いだろ〜だけど、もう頭の部分ね〜な…」
「ウサギ?」
「お前ウサギ知らねーの?」


生物名は聞いたことがあるが、実物を見たことがない。
それはどんな生物なのか興味を抱き、説明を求めるとニンマリと笑い説明を始めた。


「そういえば刹那も目が赤っぽいよな」
「そうか?」
「ああ。ウサギと一緒だな!それじゃ、刹那もウサ耳が似合うかもな!いや、きっと似合う!!」


「そうに違いない!」と何か1人で納得しながら叫んでいる。
俺はそれを無視してウサギ型のリンゴをまた一かじりして、顔を緩ませる。
机の上に置いたままになっているもう一つのリンゴを手に取り、ロックオンに差し出す。


「お前ほんとリンゴ好きだな〜」
「ああ」
「しゃーねぇ。剥いてやるよ」
「ウサギに」
「はいはい。ウサギね」


今度は形も楽しみながら食べたい。
そう思うと少し「ワクワクする」という意味がわかった気がする。





〜fin〜

リンゴ好きな刹那にはウサギ型を食べてほしい。




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