曇天の空





「ん」


 呆れた眼差しを向けてくるアリーシャに手の中のブツを差し出せば、盛大に溜息を吐かれた。

 それでも文句ひとつ言わずハンカチを取りだし、綺麗に拭いてくれている。――男の口の中にあった事実などなくなってしまいそうなほど、綺麗に。


 拭い終わったと同時に彼女のハンカチはそこらに投げ捨てた。こんな汚物より新しいものがあればいいだろう。


「……唾液がつくのが嫌なら、最初から咥内に銃なんか押し込まなければいいのよ。いつもじゃない。どうせ帰ってからまた消毒するんでしょう、二度手間じゃない」

「おもしれぇ顔するから、ついな」


 綺麗に磨かれた愛銃を彼女から受け取り、胸ポケットにしまう。

 全く何度目よ、とぶつくさ言う唇を塞いで早いところ押し倒したくなった。あんな男をこんなちんけな飛び道具で脅したところでこの身体の疼きを抑えられるわけがない。
 

 昂ぶった身体の熱は、やはり己の身体を使って鎮めるのが一番だ。





《6》

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(しおり)

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