曇天の空





 そこに指を這わすと、まだ何もしてないというのにすでに期待に満ち満ちてどろどろだった。

 このまま最奥まで突いてやろうか、と思ったけれど余裕のないアリーシャに嗜虐心が頭を擡げた。


 もう嫌だ、と言わせてやってもいいんじゃないのか、と。互いに心を削られてるような仕事を終えた後だ。何も考えられなくなるくらいになってもいいじゃないか。


「アッ……! や、シルヴァ、シル……いや、ッ…んんっ」


 彼女の声を聞いていると、その熱に任せていれば俺だって何も考えられなくなりそうな気がして。

 このまま、飲まれていきたい。何も、何一つ考えなくていい世界に。




 ――どろどろになっているそこに顔を埋めれば、叫びは一層高くなり、強い彼女の香りは俺を誘う。

 このまま、来てくれと。早く、と。全身でそう叫んでいる。


 霞み程度しか残っていない理性を手繰り寄せ、その誘いには乗ってなるものかと耐える。もう決めたんだ。いつもと同じに、なんてしてやらない。火を点けたのは――お前だよ、アリーシャ。


 舌を這わせていたそこに指を突き入れれば、ぐちゅりと濡れた音をたてて難なく飲み込んでくれた。それも当然だな、これだけ濡れていれば。反対の手で彼女の脚を大きく開かせ、指の本数を増やしてやれば白い喉を見せ仰け反った。

 声なき叫びをあげるアリーシャに構わずその喉に噛みつき、がくがくと震える腰をなぞり、わざと濡れた音を大きくたててやると、面白いくらいにその身体はびくびくと跳ねた。


 この女が段々と理性を失って乱れていく様が、楽しくて仕方がない。

 普段クールぶっているそのギャップと、そうさせているのが自分なのだという事実に、身体の奥からゾクゾク震えがくる。


 ああ、もういれてぇ。

 ぶっ飛んで泣き叫ぶまであと少しっていうのに。長く白い指がつつ……と背をなぞっていくだけで簡単に煽られてしまう。これ以上我慢なんかしてられるか。


「ま、って、待って、まだぁ……ッ、んんン……、ぁ、はっ…!」


 次こそ、はやくいれて、と。その唇で言わせてやる。

 言葉に出さず決意し、アリーシャの最奥目掛けて一気に腰を沈めた。






《8》

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(しおり)

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