曇天の空





 常宿まで待てない、とそこのホテルに連れ込んだ俺を叱るでもなく、アリーシャはただ合わせた唇に時折歯を立てまるで噛みつくようなくちづけを続けた。

 どちらが仕掛けたのか、だなんてもうわかるわけがない。もう、互いに思考がどろどろに溶けあってしまいそうだ。


 ただ、キスをしているだけだというのに。抗えない身体の熱を持て余すアリーシャの色香は、いつもながら容赦がない。


「あっちぃ……アリーシャ、脱がせ、早く」


 言うと同時に、彼女のドレスのようなワンピースを脱がしていく。ぴたりと張り付いてしまうほど薄くボディラインを出している服に包まれていた彼女の身体は、何度見ても素直に綺麗だと思う。

 ――仕事で使っているから、当然か。


 クッと笑った俺に怪訝な瞳をぶつけてくるが、それだけ。露わになった肩から胸を辿り、脇腹をするりと撫でれば、びくりと震えて脱がしかけていた俺の服をぎゅっと握りこんだ。


「なぁ、早く脱がせよ……」

「待っ……は、んん」


 はぁ、と切なげな溜息を洩らすアリーシャの身体を撫でながら、腰で止まっていた布をずるりと下げる。彼女もまた俺のベルトをがちゃがちゃと扱い、脱がしていく。

 何度もやってるってのに、なんでこうも毎回余裕がないかね。



 食むように唇を貪り、腹筋をなぞりながら彼女の手が俺の下着にかかる。ふるりと恥じらいに震える手。だけど、騙されやしない。その瞳が、期待に満ちてぎらぎらとしていることを知っているから。

 アリーシャの脚に引っかかっていた最後の衣類を剥ぎ取りベッドにその身体を押し倒せば、ふわりと舞う、埃と硝煙と――血の匂い。それが、一層俺達を煽った。






《7》

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(しおり)

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