SpecialShortStory
2008. Autumn - 2
満天の星空。
丸い頭の宮殿。
小さな水音。
そして―――砂漠の姫。
彼女だけが照らされ、美しい姿はよりいっそう輝きを増した。
それだけで会場には感嘆のため息が漏れる。
「やばいわ……リサ凄く綺麗」
「大丈夫、オレらのがすげぇし……ラストに難関が待ってる」
「難関?」
「ま、いいから見てろって」
会場には一際大きな拍手があがり、主役が登場したようだった。
空飛ぶ、魔法の絨毯に乗って。
「おー…!いいなアレ、オレも乗りてぇ!!」
「ブラックしぃー!」
「くそ……テッドめ」
テッドことアラジンは巧みに絨毯を操り、姫の元へと向かう。
『アラジン……』
『……姫』
見つめ合っていたかと思えば彼の体は反転し、とびっきりの笑顔で観客席を見渡す。
![](//static.nanos.jp/upload/k/kuro1021/mtr/0/0/20101114024437.jpg)
『(よし、今んとこ順調)』
『アラジン?
(………どこ見てんのよこのバカ男)
』
『いや、何もないです』
うやうやしく礼をし、姫をそこに迎えて空を翔ける。
その姿は本物の砂漠の夜空を観客の目に浮かばせる程優雅で美しく、幻想的だった。
「あの絨毯に魔法かけたのきっとリサね……動きがすごくしなやか。
あーこのままじゃ負けちゃう」
「大丈夫、こっからが問題だ」
絨毯が階段を作り、姫は宮殿のバルコニーへと降り立つ。
見つめ合う二人。
うっとりとした視線が絡み合い、互いの唇が……
『やっぱムリーーーっ!!!』
『ぶべっ?!』
しーん。
「ほらな?」
「………」
可哀相なアラジン、姫にキスを拒まれ突き飛ばされ絨毯から転げ落ち。
チームアラジン、ラスト1シーンにて敢え無く敗退。
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