SpecialShortStory
1周年記念企画 - 3
「ぷっ、マヌケ顔ー」
「カッコ悪いなあ、お前」
「……やっぱあんたらか……」
ブラックの左側には銀髪の男、国境隊長のシン。
両耳に大量のピアスが凶悪なイメージをかもし出しているが、その実はぬぼーっとし、何を考えているかイマイチ掴めない。
右側には整えもせずボサボサな茶髪の男、ルカ。
………彼は一応、このレイガス帝国の皇帝。
「だーかーら、皇帝ならもっとしっかりした恰好しろよ」
「イヤダ、めんどくさい。そんな事よりもしなきゃならねぇ事山積みなもんでな」
何故かぴっ、とポーズを決めているルカ。
その場にいた全員が、不審な視線を送った。
「……何やってるんだバカ殿」
「「「あ」」」
猫の子にするよう、首ねっこを掴みルカを連行していくのは、皇帝側近のナギル。
常に冷静沈着な男で、時折見せる火山の噴火のような怒り方は城の者全てを震え上がらせる。
……まあ、彼の怒りの元凶はいつも破天荒で後先考えないルカだが。
「ちょ、ナギル! アピールしとかねぇと票入んないぞ! いいのかっ?!」
「『そんな事よりもしなきゃならねぇ事山積みなもんでな』」
「あっ、お前それ俺のセリフ! 誰か助けろよお前ら! あぁぁぁ〜……」
ルカ、フェードアウト。
「………」
「……放っといて次、行きましょ」
「……だな」
誰もが皆、軍務の存在を忘れている事はサラしか気付いていない。
(……たまには遊んでも、いいよね?)
だから敢えて黙っておく。
- 39 -
[*前] | [次#]
しおりを挟む
【戻】