SpecialShortStory
Can't reach the feeling. - 5
夢を、見た。
懐かしい、夢。
でも……とても悲しい夢。
「―――頭、痛い……」
やばい、呑みすぎた。
だって、目を閉じれば蘇ってくるんだもの。
テッドが、歌姫を抱き抱えてる光景が。
その歌姫の誇らしげな顔が。
「………」
わかってた。
全部、わかったうえでの、恋だった。
テッドが、誰の事を好きか、なんて。
あたしの、この気持ちが届かない事も、承知のうえでの恋だった。
ただ、傍にいるだけで、隣にいれるだけで……幸せだった。
三年前、夜遊びをしていたテッドを追い掛けるまでは。
襲ってくるのは、後悔と嫉妬。
十も年上の女を、恋人だと紹介されて。
あの時、あーしてればこーしてれば。って、色々と後悔しても手遅れ。
……なんで、好きでもない人と付き合えるの?
……なんで、出会ったばかりのヒトなの?
………なんで、隣にいるのはあたしじゃないの?
「それも……昔の話だわ」
あたしの中で、もう決まってる。
この、苦しい気持ちしかない恋の終わらせ方。
叶わない想いならば、断ち切ろう。
ううん、断ち切ってもらおう。
他の誰でもない―――そう、テッドに。
あたしの気持ち伝えて、きっぱりと振られよう。
いつまでも先に進めないのは、いやだ。
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