SpecialShortStory
Can't reach the feeling. - 2
歌姫。
そんなご立派な通り名の女、レイガスには一人しかいない。
……なんで、今更また戻ってくるの?
このレイガスから出て行ったんじゃなかったの?
これ以上、テッドの心を奪わないで。
……あたしから、離さないで。
「はぁはぁ……ここ、だよね。
―――っ!!」
び、びっくりした。テッドと歌姫じゃない。
いきなり出てこないでよね。
「やっと落ち着いて話ができるね。おかえり、レイア。
3年…かな。長かったね。どうだった? 巡業は」
「えぇ、とても楽しかったし勉強になったわ。
テッドはどうなの、最近。
ちょっと、逞しくなったんじゃないの?」
「うん、俺今軍に入隊してるからね。
……色々あってさ」
―――あたし、バカじゃないの?
こんな所まで着けて来て。盗み聞きなんかして。
全然、終わってなんかないじゃないこのふたり。
あたしが入る隙なんか、全く無い。
昔から、この年上の歌姫が嫌いだったのは。
ただの醜い嫉妬だって事くらい気付いてた。
でも、気付かない振りをして彼女の文句ばかり言って。
それで、テッドが怒るのは無理もない話。
それ以来テッドはあたしの前で彼女の話をしなくなった。
「ほんっと、バカ。救いようのないバカだわ………」
―――そんな醜くて汚い女、テッドが好きになるわけないじゃない。
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