SpecialShortStory
Can't reach the feeling. - 1
国中が認めていようが、あたしは嫌いだった。
あの歌姫と謳われる、女が。
―――――
「どこ行くの? そんなにめかし込んで」
いつものように、酒場で呑んでいると酔ってもないのに上機嫌なテッドが現れた。
「いやさ、今からちょっと下町に呼ばれてんだぁ。
だから、今日一緒に呑めねぇ。ごめんな?」
「別にいいわよ? 気にしないで楽しんできなさいよ」
「はいよ〜。じゃなぁ」
スキップでもしそうなテッドを見送ると、わらわらと第二部隊の男共が集まってきた。
……正直、あんまり近寄ってほしくはない。
ちょっと、ムカついてるし。
本当に別にいいと思ってるわよ? だって約束してるわけじゃないし。自然と、毎晩一緒に呑むようになっただけだもの。
でも……。
「……何よあんた達。あたしは静かに呑みたいの」
「一個だけ! 教えてくんねぇ?」
「はぁ……?」
「テッドが、どうやって歌姫のコンサートチケット入手したのか!!」
……キラキラした眼で見てくるこいつらの存在、忘れるくらいムカついた。
「………ゴメン、ちょっと用事思い出したから。
ちなみにあたしは、知らないから。テッドがなんでそんなチケット持ってるかなんて」
誰をも近寄らせないオーラを放ち、リサは酒場を出て行った。
残された者達が怯えている事にも構わずに。
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