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「………」



 あの頃と変わらない寝顔。




 変わってしまったのは私?

 それとも、ブラック。あなたの方なの……?





「まだ呑気に寝てんの、そいつ」


「先生……」


 つかつかとヒール音を鳴らし、近付く保健医。

 こうしてブラックがベッドを占領することにも慣れたのか、特別困ったり焦ったりの表情は浮かんでいない。




「ったく、毎度毎度飽きずに喧嘩なんてよくできるわよね。
……で? 今度の原因は何なの?」

「あ……」



 言って、みようか。

 

 戸惑う表情を浮かべたサラに対し、保健医は静かに先を促す。

 それに安堵し、ためらいながらも口を開く。



「……ブラック、私には何も話してくれないんです。昔と変わらない筈なのに、なんだか最近……彼が遠い」



 ちらりとその寝顔を見れば、憎たらしい程穏やかで。




 やっぱり、変わってしまったのは私なの?

 ただ、私が卑屈に思ってるだけなの?



「……先生?」

「ま、あんたが気にすることはないんじゃない? セイ少年のささやかなかっこつけ、だろうからさ」



 意味がわからなくて首を傾げる。


 先生の手に引っ張られたブラックの頬が痛そうで、笑みが零れた。

 穏やかだったブラックの寝顔には、眉間に深い皺が刻まれてて。




「むー……」

「こういうね、頭で考えるより体が動くバカのすることは気にしなくていいの。
 ……いずれわかるさ。だからアンタは今までと同じよう、傍にいてあげなよ」



 バチリと引っ張っていた頬を離すと、少し赤くなっていて。

 それでも彼は惰眠を貪る。




「先生……」

「さ、私は今から職員会議だから。そいつ起きたらさっさと教室に連れて行っといて」



 そう言い放って出ていく先生の口元には、笑みが浮かんでいて。

 ためらいながらも暖かなブラックの手を取った。



「私……傍にいても、いいのかな? 支えにはなれないけど……傍にいたいの」




 絞り出すような呟きは、そっと風に乗り―――消えた。



 そこに残ったのは、2人分の寝息。

 ただ、それだけ。





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