Present
それならば、月 - 13
「ありがとう。私はサラに会えて本当によかったと思った。お前ほど月のように清らかな娘はおらぬ」
ソフィアナは震える手でサラの手を握り、言葉を繋ぐ。
「好きだと思う人間に出会うたび、別れが辛くなる……それならば誰とも出会いたくない」
サラはそっと包み込むようにソフィアナを抱きしめ、頭を撫でた。
「また、出会えばいいわ。いつだってすぐ会えるもの」
「そーよ、そーよ、たまには顔見せなさいよね」
「俺、ソフィアナちゃんになら血を吸われてもいいと思っているしさ」
いつのまにかリサと、耳を異様に赤く晴らしたテッドがいた。
テッドはまだ懲りずにだらしない笑顔を浮かべ、リサの冷たい視線を浴びた。
「またね」
サラが鈴を鳴らすような声で言葉を発し、そのあとにリサとテッドも再会を約束する言葉を口にした。
しかし、ソフィアナはゆっくりと頷くだけで言葉を紡ぐことはなく、後ろを向くとレーイに近寄り、男の服を掴んだ。
そして、ソフィアナとレーイは初めからそこにいなかったかのように、忽然と姿を消した。
残された三人は何も言わない。
赤く揺れていた太陽は頭を隠し、月がゆらり現れた。
End.
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