Present
それならば、月 - 10



「私がお前の生き血を啜ってやる!」

「ちょちょちょ、やめっ……あ」


 レーイは驚いて目を見開き、咄嗟にドアノブを掴んで腕を引こうとしたが、しかしリサの方が早かった。
 扉とレーイの腕の下に入り込んで青年の名を叫び、それと同時に扉を開けた。


「テッド!」


 レーイもリサの後に続いて部屋に足を踏み込み、ソフィアナの姿を探した。
 最初に目に入ってきたのは頭から血を流す青年で、その後に青年に噛り付くソフィアナの姿を見つけた。


 

 何故だか青年は満面の笑みではないが、気が緩んだ笑みを浮かべていて、リサはそれをなんとも言えない顔で見ていた。
 ソフィアナはリサに一瞥を投げかけたあと、口に含んだテッドの血を吐き出した。


「この男の血はアルコールの味しかしなくて不味い」


 リサはハッとした表情でソフィアナを見たが、すぐにテッドに視線を移し、力任せに彼の耳を掴む。


「こんな小さい子になにデレデレしているのよ、バカ!」


 テッドの言い訳虚しく、リサに耳を掴まれて廊下を引きずられていく。
 二人の姿が小さくなっていくのと同じく、リサの怒鳴り声もテッドの悲痛の叫びも遠くなっていった。



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