Present
それならば、月 - 4
「あのう、私に何か御用ですか?」
レーイはその人の声で我に返り、目蓋を何度か上下に動かした。
その人の声は涼やかで、まるでそよ風が通り過ぎていくようだった。
レーイが微笑むと、その人も微笑み返した。
「貴女の行く手を阻み、貴重なお時間をとらせてしまった私をお許し下さいませ。まばゆい光を放つ、貴女様の髪の毛が私の知り合いのそれかと勘違いしてしまったのです」
レーイは滑らかな動きで頭を垂れた。
「そ、そうだったのですか。えっと、私、全く気にしていないので頭をあげてください」
レーイが言われた通りに頭をあげると、その人は何か思い出したのか小さく息を吸い込んだ。
そしてまばたきを二回すると、口を開いた。
「誰かをお探しですよね?」
「えぇ、まぁ。ちょっと目を離した隙に私の小さなお姫様はどこかに行ってしまって……」
「あぁ、やっぱり!」
その人は目を輝かせてレーイの手を握ると、力任せにぶんぶんと上下に振った。
レーイは訳が分からずただされるがまま、黙ってその人の顔を見ていた。
しかしその人は突然我に返り、恥ずかしそうに頬を赤く染めて繋いだ手を離した。
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