Present
それならば、月 - 2
涼やかに流れ行く少女の声はまるで春の息吹のようだった。
座り込むソフィアナにうっすらと微笑みかけて、優しく頬を撫でる。
触れ合った場所から温かな力が流れ込んできて、ソフィアナの心が満たされていく。
「大丈夫だ」
ソフィアナの放った言葉が消える頃には、彼女の中に力がみなぎっていた。
立ち上がって、しっかりと大地を踏みしめる。
「私は貴女にする」
ソフィアナの声は、先ほどまで弱々しく座り込んでいた女の子から発せられたものとは思えないほど、威厳に満ちたものであった。
金の色をした髪の毛は強い光を放ち、エメラルドの瞳は意思の固さを秘めている。
「いや、違うな。それでは語弊が生じてしまう。私は貴女がいい」
ソフィアナは言い終わると少しだけ口元を緩ませて微笑み、水色の瞳の少女も目蓋をゆっくりと落として微笑み返した。
水色の瞳から放たれる眼差しはソフィアナに月の光を連想させ、水色の瞳の少女のことを月の化身のように感じていた。
月はソフィアナを照らす光、心の拠り所、そして彼女の世界に欠かせない存在。
「私はソフィアナという。貴女の名前をお聞かせ願えないだろうか」
「私はサラ。サラ・インバース。よろしくね、ソフィアナちゃん」
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