Present
オニキスの少年 - 16
「お前、それを、どこで? いや、オレは失くしてなんて、いない」
ブラックは一言ずつ、搾り出すように言葉を発した。
それはまるであたしではなく、自分自身に言い聞かせて、確認を取っているみたいだった。
ブラックはハッとした顔をしたかと思うと、体中に騒がしく手を当て始めた。
何か見つけたのか、ホッとした表情でになる。
ゴツゴツとしたマメのつぶれた男の子の手の平から出てきたのは、あたしが持っているペンダントとまるっきり同じもの。
ブラックがおもむろに手を伸ばし、あたしが持っているペンダントに触れると、漆黒の石は一気に光だし、次第に眩しさを増した。
しかしここに連れてこられたときほどは光らなくて、代わりにブラックが持っていたペンダントが共鳴しているかのように光りだした。
あたしが持っていた方は、光の勢いを失くし、そしてペンダントごとブラックの持っているオニキスの中に吸い込まれてしまった。
すると一気に後ろに引っ張られる感じがして、不思議だけど、怖くはなかった。
あたしはこれがなんなのか知っている、もとの世界に引き戻されているんだ。
「ブラック! あたし、ブラックはサラさんと幸せになれると思うの。そんな気がするよ」
本当だよ、心の底からそう思うよ。
その気持ちを表したくて笑った。
「その笑顔の先の、リリアンの好きな人が羨ましいな」
ブラックが笑った。
バカにした笑いじゃなくて、優しく目を細めて特別な人にしか見せないような、おこがましいけどそんな風に見えた。
その笑顔が嬉しくて、あたしは腕を伸ばしてブラックの顔を包み、頬に唇を寄せ、真っ赤に染まる黒髪の少年にクスリと笑いかけて、ブラックから離れて言葉を発した。
「バイバイ、ブラック」
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