Present
オニキスの少年 - 13


 沈黙が続き、その中で規則正しい寝息が伝わってくる。

 もう寝たのかな、と思ったその矢先にくしゃみが出そうになるから、急いで口を塞いだ。
 手の中で行き場のなくなった空気が、隙間から漏れて変な音になってしまったが、くしゃみをするよりうるさくなくていい。

 静かに安堵の息を吐き、また手を擦り始めた。

 すると柔らかなものが体を包み込み、冷えた体に温かさが染み入っていくようで、あたしは驚いて動けなくなった。


「別に何もしねぇから、黙って寝ていろ」


 ブラックの角張った肩があたしの肩の隣にあり、どうやらマントの中に入れてもらったらしい。
 目だけ上に向ければ、すぐそこに黒髪があり、目を瞑れば、ブラックの匂いに包まれているような気になって安心するのだが、心臓が音を立てて存在を主張する。

 どのくらい時間が過ぎていっただろうか。

 疲れが睡魔となり、ウトウトし始めた頃にブラックが言葉を漏らした。


「リリアンには好きな人、いるか」


 ぼんやりとした眼でブラックを見上げると、黒い瞳は真っ直ぐ前を見ていた。
 名前を呼んでくれた、と嬉しく思ったが、今ここでそれを口にしてはいけない気がして、ぐっと言葉を飲み込む。


「いるよ。エロ坊ちゃんでどうしようもない人だけど」




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