Present
オニキスの少年 - 11




「あっつ! そんな意味じゃねぇ! なんでわからん? 薪に火つけろって言っているだけだろうが!」


 黒髪の少年がいくら怒鳴り散らしても、小人は冷ややかな顔をしている。


「ブラックって剣術には長けているけど、魔法はてんでダメなのね」


 あたしも小人と一緒に冷ややかな視線を送った。


「クッソー! お前だってできないくせに!」


「できるわよ! 小人に火をつけさせればいいんでしょ!」


 黒い瞳に一瞥投げかけて、あたしは小人の前で膝を折った。


「ねぇ、小人さん。薪に火をつけてくれないかしら?」


 とびっきりの笑顔を浮かべて頼んだのだが、小人はあたしの顔に向かって火を吹いたのだ。


「小人さん、お願いよ」


 怒りを握りこぶしに込めて、でもそれが表情にでないように笑顔を保ったままで再度試みるが、今度は無視された。
 こんなに頼んでいるのに無視するなんて、頭にきた!


「早く薪に火をつけなさい! 今すぐつけなさい!」


 あたしは立ち上がり、強い眼差しで小人を見下ろし、薪に指を向ける。
 小人は慌てて薪に近寄り火をつけると、すでに闇に包まれ始めた洞窟内が光で照らされ、振り向いて小さな瞳をこちらに向けて、お辞儀をしたかと思うとあっという間に消えてしまった。

 焚き火を真ん中にして、あたしとブラックは力なしに腰を下ろした。
 どちらからでもなく視線がぶつかり合い、そして笑った。


「やっぱ女ってこえーわ」


「あら? やっと女だって認めてくれるの?」


「おー、お前は怖い女だって認めてやる」


 あたしはブラックを殴る真似をして、ブラックは怯える真似をして、それがなんだかおかしくってなにもかも忘れて笑った。




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