Present
オニキスの少年 - 10
くぼんだ岩の下に、ブラックの言っていた洞窟はあった。
大した奥行きはないが、二人分の体を休めるにはちょうどいい大きさで、ブラックはそこにつくとまず先にひざの手当てをしてくれた。
そして黒髪の少年は休憩もそこそこに、何も言わずに洞窟の外に出て行ってしまった。
空は朱色で染まり、頭上はもう紺色になっている。
数え切れないほどの星が浮かび上がり、あっという間に紺色の部分が広がっていく。
しばらくすると、ブラックが両腕に木の枝を抱えて帰ってきて、その木の枝を寄せてあたしに目を向けた。
「お前、魔法もろくに使えないんじゃ精霊、見たことないんだろ。オレが見せてやるよ」
ブラックがなにやら呟くと、手の平に乗せて運べそうな小人みたいなのが現れた。
小人の髪の毛が火のようにうねっていて、全体的に赤色に統一されている。
「薪に火をつけろ」
それは明らかに人にモノを頼む態度ではなく、黒い瞳は偉そうに輝いていた。
小人はバカにしたような笑みを浮かべ、少年の黒色をした前髪に小さく火をつけ、慌てて少年はその火を手で叩いて消した。
「違げぇ! オレの髪の毛にじゃなくって、この木の枝に火をつけるんだ!」
枝を一本拾い上げ、ブラックは小人に差し出した。
するとブラックの持っていた木の枝は、一瞬にして燃えて黒い灰となり、風に吹かれて飛んで消えた。
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