Present
オニキスの少年 - 9
ブラックは少し怖い顔をしながらあたしとの距離を縮めて見下ろし、とっさに背中と膝裏に腕を回して、あたしの体を引き寄せながら抱き上げた。
「えっと」
ブラックはこういうことするの慣れているのかな、やっぱりカッコイイもんね。
「そ、そんなんじゃないぞ! お前の歩く速さになんかに合わせていたら、いつまで経ってもつけやしない」
「そうだよね。ブラックはあたしのこと女と認めてないもんね」
「あーそうだよ。お前は女じゃない」
「それは残念なことで」
黒い瞳はそっぽを向いて口を尖らせ、ブツブツと呟くが、それが照れ隠しに怒っているなんて誰の目からも明らか。
ブラックだって慣れているわけじゃないんだね。
「ありがとね」
「だからお前のためじゃねぇって」
「じゃあ早くその洞窟につれてってくれない? この体勢疲れるもん」
「むかつく女は置いていく」
「あれれ? あたしは女じゃないのでしょ?」
「うるせぇ。黙ってろ」
その言葉が怖かったわけじゃないけど、運んでもらっているのに悪態ばかり吐くのは申し訳なくなって。
静かにしていると、肌が触れるところから温かみが伝わってきて、この黒髪の少年も同じ人なんだなってしみじみ思った。
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