Present
オニキスの少年 - 6
「さっきのイノシシみたいな獣は魔族、っていうの?」
「そうだ」
あたしの顔を見ないで返事をしたブラックが、焚き火の中に小枝を投げ入れると、パチッと弾けた音がした。
薪を燃やす火が揺らめき、少年の黒い瞳が少しだけ橙色を帯びる。
睫毛を伏せて焚き火を見る顔は笑っているのに、どこか少し寂しそう。
どうして一人なの、と尋ねてみても困った笑顔で答えをはぐらかされる、でも深く追求することはできなかった。
黒い瞳の視線の先の、はじける音を立てながら燃える火を見ていると、先ほどのことが自然と目に浮かんでくる。
この焚き火もこの不思議な少年がつけてくれた。
そう、精霊を使って。
あたしの意識は過去へとさかのぼって行く――。
****
「まぁ、ここまでくれば安心だろう」
ブラックは走る速度を落として立ち止まり、後ろを振り返って先ほどの獣が見えないのを確認すると、いきなりあたしを担いでいる腕を放した。
支えをなくした体は体制を立て直す前に地面に落ちて、落ち葉が衝撃を和らげてくれたおかげでそんなには痛くはなかった。
でも、ぞんざいに扱われるのには腹が立つ。
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