Present
オニキスの少年 - 1





 棚には木の箱やダンボールなどが所狭し並べられていた。
 どれもこれも表面が白く見えるほど埃が積もっている。

 中には手の込んだ細工を施された入れ物もあったが、それすらも埃をかぶり、一目見ただけでは気に留めるほどのものには見えない。


「これすごく高価そうなのに」


 あたしは埃で白っぽくなった入れ物を手にとって眺めた。

 両手を合わせた程度の大きさで、息をふっと吹いて埃を飛ばせばいとも簡単に雪のように舞い上がっていく。
 しかし長年積もりに積もった埃は円を描いてこちらに戻ってきて、埃を含んだ空気を吸い込んでしまった。

 体が異物に反応してむせる。

 こうなるとわかっていたのに、と後悔してももう遅く、体中の空気を押し出すかのように咳き込んだ。
 次第に咳きをする間隔が長くなって、ゆっくり落ち着いていく。


 二、三度目をパチパチさせて視点を定め、ふと視界に入った小さな箱に目を奪われる。
 ごちゃごちゃと物がひしめき合う中でひっそりとそこにあった。

 小さな箱から視線を外さずに近づいていく。
 その小さな箱には埃が積もっていなかった。
 まるで埃がその箱に触れることができないかのように、それを避けて厚く積もっていた。

 手にとってみると木製で驚くほど軽い。
 先ほど手にしていた高価そうな箱とは違い、凝った細工はされていないが、その木目の良さを引き出すように必要最低限の細工が施されていた。

 中はどうなっているのだろうか。

 あたしはスカートの裾で手を拭い小さな箱の蓋を開けた。
 期待は裏切られ、箱の内側はなんの細工も見受けられなかったが、落胆する気持ちになる前に中に入っていた十字架のペンダントに目を奪われた。

 たぶんこの黒い石はオニキスだ。

 銀でできた十字架の中心に埋め込まれた漆黒の石を親指でなぞる。
 石は冷たく滑らかな肌触りで、よく磨かれた表面にあたしの顔が映っている。

 しばらくその石を見ていたら急に光だし、瞬く間に強い光となってあたしを包み込んだ。

 目の前が真っ白になって宙に放り出されたような感覚。
 どちらが上でどちらが下かなんて白に染まった世界ではよくわからない。




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