【不意討ちの曜日】


今日も早起きした。昨日今日と立て続けに突然早起きし出したので正直キツい。
でも昼寝も出来ないのです。昼寝したらお母さんにきっと早起きやめろと言われるし
ジンもきっと寝てる間に行っちゃうからね。起きてる内にジンと一杯遊びたいのだ。
そうして眠気と格闘しながら積み木を組み立てていると、ジンが唐突に言った。


「ミト、本読んでやるよ」

「……本?」


ジンが取り出してきたやたら分厚い本。
パラパラ捲ってみるが何について書いてあるのかまったく分からない。
というか私はまだあまり読み書きができないので当たり前なんだけど。

眉を寄せて文字を眺めていると、ジンが笑った。


「面白いぜ。まーミトにゃまだ早いか」

「………読んで」


その言葉にイラッときて、
読めと催促するとジンはもっと笑った。


「そーか、子供なのに偉いな」

「ジンも子供でしょ!はやく!」

「おー」


ジンはどかっと座ると、横をぽんぽんと叩いて私に座るように諭した。
私が大人しく座り、本を覗き込むとジンがつらつらと本を読み始める。
それは、偉大なハンターのお話だった。所々に入っている挿し絵には
怪物や宝物などが描いてあって、まるでおとぎ話のように思った。


「ねージン、これフィクション?」

「は?ちがう、ノンフィクション」

「えーと、それってどっちだっけ」

「わかんねぇ癖に難しい言葉使うな。実話だよ、ホントにあった事だ」

「ええ、この怪物本当にいるの?嘘だー」

「良いから黙って聞け」


嘘みたいに夢みたいな、作り話のようなこのお話は、実話らしい。
やっぱり信じられなくてチラリとジンを見上げると、
読み進めていくにつれてジンの目はどんどんキラキラするのだ。
読み聞かせてる本人が夢中だった。よっぽどこの話に憧れているらしい。
……あーあ、楽しそうでむかつくなぁ。

急にお話が耳に入ってこなくなった。
ハンマーだかハンターだか知らないが、ぶっちゃけ何をする人なのか話聞いてもよくわからないし。
でもこんなキラキラした目で本を読んでくれてる人に「あ、もう良いんで」なんて言えない。困った。
それにしても、本当に楽しそうだなぁ。ジンは、ハンターになりたいのかな。
それって、やっぱり、……………





「そしてそのハンターは、………って、ミト?」

「………」

「……寝てやがる…だから早起きやめろっつったのによー…」

「………」

「………」


静かに寝息をたてて寝ているミトを暫くじっと見つめたあと、
ジンは立ち上がった。そして、そのままこっそり出ていこうとした。

すると、それを察知したミトは
バッと起き上がってジンを捕まえた。


「ジン!私も行く!おいてかないで!」

「うおぉミト!」

「つれてけ!」

「あーはいはい、すげぇ執念だなおい」


じゃあ行かない、いつもの調子でそういったジンを見て
ミトはほっと胸を撫で下ろした。
ジンはそんなミトを見てふっと笑った。


「寝たからもう本は読んでやんねぇよ」

「……いいよ、別に。おもしろくなかった」

「そーか」

「うん」

「ミトはずっとここに居るんだもんな」


そう言ったジンに、ミトは何とも言えない気持ちになった。
ジンはハンターになるのだろう、ミトはまた、なんとなくそう思った。
そうしたらきっと、きっと。わかっている。

ほら、別れの日なんてもうすぐそこだ。


130128
不意打ちの金曜日
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